アートスクールで学んだこと

私のクリエイターとしての姿勢は、専門学校での3年間で大きく形作られました。
ここでは、その学びを振り返り、絵とゲームへの情熱を胸にゼロから始めた私の経験を共有します。

専門学校を選んだ理由

高校卒業が近づき、進路を決める時期が来ました。
私は絵を描くのが大好きで、クリエイティブな仕事に就きたいと思っていました。
親は安定を優先し、大学進学を勧めましたが、私は「絵とゲームで生きていきたい」と強く主張し、専門学校への進学を説得しました。当時、ゲーム業界への風当たりは強く、親の心配も理解できました。それでも、自分の「好き」を信じ抜きました。

いくつかのオープンキャンパスを訪れ、東京コミュニケーションアート専門学校を選びました。
現役クリエイターの指導と、温かな校風に惹かれたからです。
絵を描くことが好き、ゲームが好き、それだけの想いを胸に、知識も技術もゼロの状態で、2007年の春に入学。ここから、3年間の学びが始まりました。

1年生:新たな学びの世界

1年生の授業は、静物デッサン、Mayaでの3Dモデリング、アクリル絵の具を使った平面構成、Photoshopでの2DCG制作、グループワークなど、多岐にわたりました。すべてが新鮮で、毎日ワクワクしながら学べました。同じ夢を持つクラスメイトに囲まれ、互いに刺激し合えたのも大きな喜びでした。

初めてデジタルで絵を描いたときは、驚きの連続でした。当時は紙に鉛筆で線画を描き、スキャンしてPhotoshopで着彩する技法が主流。慣れないツールに戸惑いましたが、デジタルならではの表現に夢中になりました。

海外研修でアメリカを訪れたのも、忘れられない出来事です。個性的な建築物や、CGアーティストによるZBrushのワークショップに圧倒されました。ハリウッド映画やSFが好きな私にとって、本場の技術は衝撃的。自由時間に書店でアートブックを買い込み、帰国後はそれらをバイブルにドローイングの練習に励みました。

グループワークでは、学校イベントの企画をチームで考え、プレゼンしました。授業や制作の合間を縫っての作業はハードで、徹夜も珍しくありませんでした。チームリーダーとして、プロジェクトの進行と人間関係のバランスを取る難しさに直面。この経験は、今のチームマネジメントや講師としての仕事に活きています。

2年生:基礎の大切さと情熱の芽

2年生になると、より実践的な授業が始まりました。水彩画やペン画など、デジタル以外の画材にも触れ、多様な角度から絵作りを学びました。友人と共同で絵本制作にも挑戦し、シナリオ作りや製本技法など、ゲーム以外の分野の知識を得る貴重な機会となりました。

3DCGの授業では、キャラクターモデリングを学びました。1年次で別々のクラスだった生徒たちが合流。私たちのクラスはMayaの基礎をじっくり学び、メッシュ構築や無機物モデリングを中心に進めていました。一方、もう一方のクラスは早い段階からキャラクターモデルを扱っており、技術の差に不安を感じていました。基礎中心の授業に退屈さを覚え、羨ましく思ったのが本音です。しかし、合流後の課題制作で、私たちのクラスの方がモデリング技術が高いことが判明。基礎がしっかりしていたため、後発でも容易に追い越せたのです。粘り強く基礎を学ぶ大切さを痛感し、本質的な授業を提供してくれた講師に感謝しました。

2DCGの授業は、学内展示会向けのイラスト制作など、本格化しました。最も印象的だったのは、イラストレーターのフランク・フラゼッタの作品との出会い。資料集め中に偶然見つけ、心を奪われました。「自分もこんな絵を描きたい!」と講師に伝え、技法を学びました。それから毎日、通学中の電車で画集を眺め、自分の絵と比較しながら「何が足りないか」を考え続けました。この目標が、学びを迷いなく進める原動力に。フラゼッタの影響は、今のイラスト制作の基礎となっています。

明確な目標と情熱を持つことが、学びを充実させる秘訣だと実感しています。

3年生:危機感とプロ意識の目覚め

33年生は就職活動が本格化し、ポートフォリオ制作が中心となりました。これまで楽しく学び、成長を実感していましたが、周囲の学生と比べて自分の技術が劣っていることに危機感を覚えました。その焦りから、デッサンの授業を追加受講し、一から絵を学び直しました。

そんな中、卒業生の講演で聞いた言葉が転機に。「プロの目は、わずかな妥協も見抜く。端から端までこだわり抜いた作品でないと通用しない」。この言葉にハッとし、ポートフォリオを一から作り直す決意をしました。すべての作品に妥協せず、細部までこだわり抜きました。集中して取り組む中で、先生方から教わったことが点と点がつながるように思い出され、画力が急激に向上したと実感しました。

完成したポートフォリオで様々な企業にエントリー。「どこか一社でも受かればいい」とがむしゃらに動き、学校の先生が勧める企業すべてに応募。面接で厳しい指摘を受けましたが、フィードバックを真剣に受け止め、改善を繰り返しました。

最終的に3社から内定をいただき、無事に就職活動を終えることができました。
こうして多くの学びと挑戦を乗り越え、笑顔で卒業できたことは、今でも私の大きな誇りです。

学びの成果と使命感

専門学校の3年間は、ゼロからクリエイターへの道を切り開いた時間でした。絵とゲームへの情熱を信じ、努力を重ねたことで、プロとしての一歩を踏み出せました。今、ゲームアーティストとして、次世代に夢を与える作品を作りたい。そして、講師として、夢を叶える手助けをしたい。そういった使命感を持って取り組んでいます。