デザインの仕事で意識していること

私がデザインの仕事で常に心がけていることは『三方よし』の精神です。
これは、ビジネスやものづくりの基本的な考え方ですが、デザインにもピッタリ当てはまります。

『三方よし』
中世〜近代に活躍した近江商人による商売の哲学
売り手よし、買い手よし、世間よしの3つを意味する

  1. 売り手よし:自分が納得できること
    まず、制作者である自分が本当に気に入り、満足でき、自信を持って提供できるデザインかを考えます。仕事である以上、クライアントやプレイヤーのニーズを優先すべきですが、独りよがりにならないよう注意しつつ、自分自身が情熱を注げなければクオリティは必然的に低下します。 そこで、自分の基準を明確に持ち、納得のいく仕事に仕上げることで、結果的に責任を果たせると考えています。このスタンスが、制作のモチベーションとなっています。
  2. 買い手よし:クライアントが喜ぶこと
    次に、クライアントの満足を最優先にします。彼らは、私たちアーティスト以上にゲーム全体の世界観やセールス戦略を熟知しています。だからこそ、クライアントが納得し、喜ぶデザインを提供することが、多くのプレイヤーの楽しみにつながるのです。 そのために、丁寧なヒアリングで要望を把握した上で、追加の提案や予想外のアイデアを加えるサービス精神を欠かしません。クライアントから「これ、最高!」という反応を引き出すことが、仕事の醍醐味です。
  3. 世間よし:プレイヤーに愛されること
    最後に、ゲームが世界中のプレイヤーに届くことを念頭に置きます。一人ひとりの好みが異なるため、全員を完璧に満足させるのは不可能ですが、ひとつひとつのデザインにこだわりと熱意を込めれば、それは必ず伝わります。 こうした積み重ねが、プレイヤーとの信頼関係を生み、プロダクト全体の評価を高め、ゲーム産業の発展につながります。

この3つの視点を偏りなくバランスよく保つことが、優れたデザインを生む鍵だと考えています。例えば、売り手に偏れば独りよがりになり、買い手に偏れば質にムラが生じ、世間に偏れば没個性に陥りやすいため、制作過程で定期的に振り返り、必要に応じて軌道修正を心がけています。 これにより、安定して高品質なデザインを提供できるのです。

デザインの仕事は、自分が満足し、クライアントが喜び、プレイヤーに愛されるものを作り上げる、非常にやりがいのある挑戦です。この精神をこれからも大切にしていきたいと思います。